第14章 分岐
潜水艦はベータ島に5日間 滞在し、まもなく出航する。
アルコは、長い桟橋の先端で潜水艦を見送った。
ほとんどのクルーが甲板に出ていて、手を振って口々に挨拶を告げる。アルコもみんなに手を振って、大きな声で返事をした。
甲板にいるローと目があった。アルコは両手を大きく広げ、ハグをねだるような格好で顔をしかめて笑った。彼は迷惑そうな顔を作り、アゴであいさつを返した。“迷惑そう”なその顔は、本当に迷惑に思っている訳ではないことを、アルコはわかるようになっていた。
声が届かない距離になっても、誰一人艦内に入ることなく手を振っている。ローがベポを小突いて何か言い合っているのが見える。
「ははっ」
ひとりきりの笑い声がむなしく響き、心地よい潮風がアルコのワンピースのロングスカートを巻き上げる。アルコは、小さくなっていく潜水艦に背を向けて、桟橋を戻り島へ向かって歩いていった。