第13章 表と裏
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アルコが落ち着くのを待って、二人は順番にシャワーを浴びた。
アルコが長いシャワーを終えて出てくると、ローはどこからか調達したウィスキーをグラスに傾けていた。グラスをひとつ受け取り、ベランダを臨む布張りの椅子に座る。
先ほどまで熱く絡み合っていたベランダの床板には二人の這った水跡が、涙の筋のように まだうっすらと残っていた。
──── さて
どこから、どう話そう
そう思っていたら、ローからぽつり、ぽつりと話し始めた。
唐突に
自分には『恩人』がいる、と。
ローは当時ある“トラブル”を抱えていて、それを解決するために半年間その人と旅をした。その旅で、ローはその人から『命』と『心』と『自由』をもらった。その人は命を落としたが、ローは今もその人の成し遂げられなかったことを果たすために生きている、と。
トラブルの内容やその恩人が命を落とした経緯、その人のために何がしたいのかは伏せるような話し方で、具体的なことはわからなかった。
突然、なぜそんなことを話し出したのかも、わからない。ただ、何かを自分から話そうとしてくれていることは伝わってきた。
ローは、話しながら時々両目を細めた。アルコは、それがとても愛おしかった。静かににうなずきながら、寄り添うように話を聞いた。
「大好きだったんだね」
「だぃっ………?! お前、何言ってる。
………男だぞ。話聞いてたのか」
「聞いてたよ、失礼な。
あ、そういう意味じゃなくても、好きだったには違いないじゃない。 別に変じゃないよ」
そう言って、アルコは泣きはらした赤い目を伏せた。