第12章 a half one
アルコはホテルの部屋にある革張りの椅子に膝を立てて座り、ウィスキーをグラスに傾ける。
憑き物が落ちたような放心状態で、グラスを手にとり、テーブルに置いた花をみていた。
あんなにごちゃごちゃしていた自分の気持ちを、一瞬で整えた『不思議な花』。
花びらの先が それぞれ つんと尖った紫色の小さな花は、ローと初めて出会った時、オークション会場で渡されたストールを思い出させた。
あの『紫色の花柄のストール』
何の説明もなく ぽいと渡されたそれで、アルコは珀鉛病の白いアザがちらつく、破れたドレスの胸元を隠すことができた。
ローは『本当は』優しい、ということはあの時から変わらない。
それは わかってるんだけど ────
シャワー室から出てきたローが、テーブルのウィスキーの瓶を取り上げ 直接飲み始める。瓶の傾きは一瞬で真上まで達し、瓶を振ったり、瓶の口の中に舌を突っ込んだりしているのを、寝起きの重い頭でぼんやりと みつめる。
あぁあ
あとちょっとしかないから
大事にしていたのに
「もう1泊……するか」
「え、そんなことでいいの? “キャプテン”」
「………あいつらも好きにやってる」
もう夕方の日差し
今朝の情事から、ずっとこの部屋で過ごしている。
「………もうしないよ」
「するだろ」
「いやだってもう3回も……」
「最初のは………カウントするな」
そう言ってアルコの手からグラスを取り上げる。
グラスのウィスキーも承諾なく飲まれ、少しだけ残されたそれをテーブルに置いた彼は、椅子が後ろに倒れ込みそうな勢いで口づけてくる。
ウィスキーの芳醇な匂い
むせ返りそう
飽きることなく繰り返されるキスに
一応 抵抗してみるけど
あぁ 今度こそ流されないようにしてたのに
半分は、すでに もう
いや、最初から あきらめてる
*
翌朝
潜水艦に戻ってきた二人を甲板から見つけたクルー達
『エロい………』
『二人とも3割増しでエロい…』
『ぜってー、ヤッてる』
『はぁ~、遅かれ早かれだよな……』
口にこそ出さないが、それぞれの認識は共通していた。