第1章 止まれこの想い『宇髄天元』
私はそんなことを言ってもらえる立場じゃないのに。
そんな風に優しくされたら、もう何も考えられなくなる。
まるで------。
自分のありのままでいていいのだと。勘違いしそうになる。
「確かにお前は一年前に俺の家に来た。お前が知らない過去だって俺にはある。」
「っじゃあ....」
私が離れたほうが絆がもとに戻るんじゃ...,
「だがそれがどうした?」
「!!」
「俺はお前を本気で愛してる。あいつらと同じくらい。ここにきた年数が浅いからってお前だけに愛が薄いわけじゃない。それでお前も俺を愛してくれてるんだろ?」
「.....はい。」
「じゃあそれでいいだろ?それ以外になんか要るか?俺とお前の関係に。」
「そうじゃなくてっ....他のお嫁さんたちもきっと私のことは....」
「あいつらがそんなことを思う奴らに見えるか?」
「!!」
痛いところをつかれて固まる。
「あいつらがここに来た歴が浅いからってお前を嫌がるようなことをすると思うか?それはお前が一番分かってるだろ。」
「っあ....」
その言葉とともに蘇る皆の顔。
みんなが私を慕ってくれているのは、行動でも言葉でも分かった。
(あぁ。私---------。)
戻って、いいのかな。
あの温かい光の中に。
あの故郷のような懐かしさに浸れる場所に。
そこで私はようやく、天元様の背中に手を伸ばした。
そのまましばらく、何もせずに時間が経つ。
そして10分くらいした頃。私は小さく声を上げた。
「...天元様。」
聞こえるか聞こえないかの小さい声。
「んー?」
でもそれを天元様は拾った。
「私っ....戻っていいんですかっ....?」
言いながらも涙が溢れる。
すると天元様は優しく頭を撫でた。
「当たり前だろ。お前は俺の自慢の嫁だ。
....愛してる。」
「っ....はい、私も、愛してます。」
そうやってそっと天元様の背中から手を放して天元様の顔を見上げようとすると....
ぴかっ
「っ...」
天元様の方向から明るい光が射した。
それに天元様も気づいてそっとそちらを見る。
「あぁ。夜が明けたなぁ。」
そう。長い長い夜が。