第1章 止まれこの想い『宇髄天元』
(私はいなくなったほうがいいのかもしれない。)
そんな大きな不安がどんどん膨らんで、破裂しそうだった。
「....よし、もう寝ようぜ。今日はもう遅い。出迎えありがとうな。」
その天元様の一声でみんなが一斉に笑顔でおやすみなさい!と言う。
それに天元様も「派手な挨拶だな!また明日!」と笑って皆の頭をぽんぽんと軽く叩く。
それだけでも幸せな気持ちになった。
(...だけど。私はこの幸せを手にしたら、駄目だ)
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みんなが寝静まった、真夜中のこと。
私はこっそりと布団を抜け出して着替えていた。
それはいつもなら着ないような明るく綺麗な色の着物と、いつもは上げている髪をサラリとおろして。
あとは身につけている香りさえも違う香りにつけかえた。
そっと鏡を覗き込むと、いつもとは違う私。
そして私は一言、よし、と意気込んだ。
最後に紙に皆への置き手紙のようなものを残していく。
理由は単純。
『天元様の事が嫌いになりました。もうここにはいられません。』
(...嘘だ。)
天元様のことは誰よりも愛してる。この世界の誰よりも。
だけどきっと。
天元様の隣にはやっぱり3人だけのほうが良かったんだ。
私なんて、いないほうが良かった。
私がいたらきっと皆の幸せ、皆の過去を違うものに変えてしまう気がするの。
(だから私がいなくなれば、きっと四人は。また前のように...)
書いている間に涙がぽたぽたと流れる。
だけどそれを無視して私はその手紙をそっとみんながいつも使う机の上に置いた。
そしてまだ冷たい冷気の中、天元様の家をそっと抜け出す。
家の前でぺこりとひとつ頭を下げると、私はずっと走り出した。
私がいなくなったことを知れば手当り次第探してくるだろう。
とりあえず二町先へと行こう。
そうしたらきっと見つかるのも遅くなるはず。
一応一ヶ月は余裕に暮らせるほどのお金は持ってきた。
あとはどこかに下宿して、仕事をもらって...
(...これは後で考えよう。とりあえず今は。)
大好きな天元様から、離れないと。