第4章 鈍感な君に送るもの『竈門炭治郎』
そう言われてしぶしぶと宇髄さんの家を出ようとすると...
「あ、そうだ華。俺の家に来る日は炭治郎に好き好き言うなよ」
帰り際にそんなことを言われた。
「え、どうしてですか?」
「意識させたいんだろ?なら距離を置くことも大事だ。」
「え、それ、気づいて、」
「はい、じゃあまた明日!じゃあな!」
ばたん!
そう言うと綺麗に玄関を閉める宇髄さん。
なんだあれ、と思いながら宇髄さんの家から帰る。
その途中に宇髄さんに言われたことを思い返してみた。
(....確かに距離を置くことも大事かも。)
もしかしたら私は好き好き言いすぎて言葉の重みがなくなってきたのかもしれない。
(それなら時間を置いて言ったほうが言葉の重みが増すよね。)
久しぶりに宇髄さんの言葉に同意した私はそれから炭治郎に軽々しく好き、と言うことはなくなった。
その翌日も。その翌日も。
「あ!炭治郎!」
毎朝炭治郎のところへは通うものの。
好き、とは一言も口にしない。
「今日も良い天気だね!」
最初の日に私がそう言うといつもの私じゃないと気づいたのか炭治郎は不思議そうに私を見つめた。
「あ、あぁそうだな」
そして少し間を置いて私に笑いかけると私も満足して宇髄さんの家へと向かっていくのだ。
そして宇髄さんに話を聞いてもらって助言をしてもらう。
それが私の最近の朝の日課となっていた。
そしてその日課も一週間ほど経った頃。
私は宇髄さんの家でまた助言をしてもらおうと意気込んでいた。
「宇髄さん!助言下さい!」
すると宇髄さんは意外なことをいう。
「よし、お前もう炭治郎に好きって言っていいぞ。」
「...え」
思いもよらない言葉に体が固まる。
その私の様子に宇髄さんはにやにやと笑った。
「なんだあ?炭治郎に好き好きこの前までポンポン言ってたじゃねーか」
「あ、いや、そうなんですけど...最近言わなかったので何だか恥ずかしいというか....」
「ほお、こりゃ潮時だな」
「え?」
また宇髄さんが小さな声で呟く。
ぱっと宇髄さんを見るもまたそれは視線によってかわされてしまった。
そしてまた帰る時間が来る。