第4章 鈍感な君に送るもの『竈門炭治郎』
鈍感すぎる炭治郎に、何かできることはないだろうか?
(いやだって毎回好き好き言ってるのに全く反応しないんだよ?)
直接言う以外に何か方法はないのだろうか。
私だって動きたい。
この停滞している状況を変えたい。
そうやってうんうん捻っていると....
「お、華じゃねーかこんなところで何してんだ?」
「!!」
聞き覚えのある声にぱっと後ろを振り向く。
「あ、宇髄さん....」
後ろを向くと、もう柱を引退したものの、まだ鬼殺隊のためにここに残ってくれている元音柱の宇髄さんの姿があった。
「お前がそんなしおらしい顔するなんて珍しいなあ」
にやにやとこちらを覗き込む宇髄さんを私はジト目で見つめる。
「....」
「おーおー、怖い目で見んなって!」
....実は、宇髄さんとはひょんなことから柱健在のときに同じ任務になったことがあって。
そこでめちゃめちゃ気が合って柱なのに友達のように接しているのだ。
だから私のことを下の名前で宇髄さんは呼ぶ。
そもそも鬼殺隊に入っていて下の名前で呼ばれることなんてそうそうないので大体呼ばれたら誰か検討つく。
御館様か、炭治郎か、善逸さんか、宇髄さん。
そこだけは私のことを下の名前で呼ぶのだ。
御館様は置いておいて、他の人がなんで私を下の名前で呼ぶのか、理由は知らないけど。
そんなことを考えていると、さらにニヤついた顔をした宇髄さんとばっちり目があっていた。
「へぇ、俺のことを置いといて悩みごとかぁ身分の良いことだなあ」
「え、いや、」
「お前が色恋沙汰で悩んでるってのはもう知ってんだよ」
「え!?!?」
まさかの図星発言に驚きすぎて体が固まる。
(な、なんで宇髄さんが知ってるの...?)
まだ一瞬しか話してないのに...!?
その態度でわかったのかまた宇髄さんはにやりと笑った。
「ほーら、それ、図星だろ。」
「っ、いや、私は....」
「嫁三人持ちの俺がしっかり話聞いてやるからな?」
「!!」
気づいたときにはなんと両腕をがっちり掴まれて何か面白いことを見つけた少年のように宇髄さんは笑った。
その瞬間、私は逃げられないことを悟ったのだ。