第3章 見えない壁と恋心『煉獄杏寿郎』
(あぁここで好きなんて伝えたらもっと伝わらないじゃない。)
そんなことを頭の片隅で考える。
そして次の瞬間には。私は師範を隠して鬼の目の前に立っていた。
「鬼...。私はお前を許さないっ....」
大好きな師範を傷つけたこと、絶対に。
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(何あれ。これまで感じたことないものね....)
鬼は目の前に立っている少女を見て思った。
先程から炎の呼吸の男と闘っていたが、その少女が師範!と叫ぶたびにその男は間合いの内側から離れた。
(あいつもあいつで変な男だったけど...この雰囲気、なんなの?)
その少女は先程とは打って変わって鋭い眼差しでこちらを見ていた。
ううん、ただ鋭いだけじゃない。
オーラさえも、炎のように赤くゴオゴオと燃えているようだった。
(まぁいいわ。感情的になったやつを殺すのなんて単純だもの。)
感情的になったやつほど倒しやすいものはない。単純な攻撃と怒りや悲しみに体を震わせて許さない!と叫ぶだけ。
(人間ってそんなもんよ。)
「あんたもその男みたいにしてやるわ!死ね!!」
ドォオォン!!!
私がこれまで人を喰ってきた数分の斬撃を出す。
それはゆうに100を超えているはずだ。
超えているはずなのに....
(....え?)
私は目の前にいる人物を見て久し振りに驚いた。
何故なら目の前に立っている少女は...傷ひとつついていなかったから。
(なんで、傷ひとつないわけ....?あたしの攻撃受けたわよねどういうこと...?全部受け流した...?でもあの斬撃を...?)
「鬼。私はお前を絶対に、許さない。」
「!!」
その声で辺りの空気がびりびりと揺れる。
(嘘、こんなのさっきの男でも出さなかった...っ怒りに任せた攻撃は単純なんじゃなかったの?)
そう。
怒りに任せた攻撃は単純だ。
すぐに致命傷ともなりかねない。そしてすぐに限界が来てしまう。
だが、今この瞬間の華は、鬼への怒りと、煉獄への想いにより、
その限界を、超えた。