第3章 見えない壁と恋心『煉獄杏寿郎』
分かりました...としぶしぶ承諾すると、師範は打って変わってにこりと笑って良い子だ、と私の頭を撫でた。
(うう、だからその笑顔に弱いんですってば...!)
そんなことを一人心の中でひっそりと悪態をついていると....
「... 華。ついたぞ。」
「!!」
師範の声に顔を上げると、禍々しい雰囲気のする森の前についた。
「っ....」
そのあまりの雰囲気に少し後ずさりそうになるのを必死で抑える。
すると師範はそっと私の肩を撫でた。
「... 華なら出来る。自分を信じろ。」
「っ、はい。」
師範の声は誰よりも落ち着いて、私の心の中に浸透していく。
「よし、じゃあ入るぞ。」
そして師範が前に、私が後ろになってどんどんと奥深い山をかき分けていく。
今は禍々しい空気に包まれているはずなのに、師範の大きな背中を見ていると、その気持ちよりもずっと大きな温かな感情が私を包んだ。
(...私やっぱり師範のこと好きだな。)
どうしてもどうしても、諦められない。
そう思った、そのとき。
「----華、来るぞ。」
「!」
ざんっ!!!
師範がそう呟いた途端、前方、後方から多数の鬼が飛び出してきた。
「炎の呼吸 壱の型 不知火!!!」
その攻撃で師範は前の敵を一掃する。
だけど...
(師範、危ない!!)
横からその隙を狙って鬼が飛び出してきた。
師範も驚くものの反応できていない。
(っ、私がやらなきゃ...!)
そう思った瞬間。体が動いていた。
「炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天!!」
「ぐわぁっ!!」
その鬼の雄叫びとともに鬼の姿が消えていく。
(っ、出来た、師範を庇えた...っ)
まだ安心できずに肩でハァハァと息をしていると...
「華、大丈夫だ。もうここに鬼はいない。」
「!」
その声で我にかえる。
はっと師範を見るといつもの笑顔を浮かべていた。
その姿にほっと息をなでおろす。
「それにしても驚いたな!華がまさかあのスピードで鬼に斬りかかれるとは!」
「い、いえ、たまたまです!」
師範に褒められることが少し恥ずかしくて俯いたその時。