第3章 見えない壁と恋心『煉獄杏寿郎』
(まぁでも、そのおかげで師範とも会えたし、結局はいいかな。)
それにここに来たおかげで、色んな大切なことを学べた。
千寿郎くんにも会えたし、亡き師範のお母さんにも会うことが出来た。
そして....師範兼私の好きな人である、煉獄さんという存在と出会うこともできたから。
煉獄さんへの恋心を抱いたのは、継子として稽古をつけられてから、一ヶ月ほど経った頃。
今までは厳しい一面しか見えず、もうやめてしまおうかと思ったときのことだった。
『華!こちらへ来い!』
『は、はいっ!』
それはいつもの稽古終わりに。
毎日のように怒られて、炎の呼吸についてのことを語られていた私は内心またか、と思いながらも煉獄さんの前に出ていた。
『な、何でしょうか師範』
そう言いながらももう半ば怒られることは分かっていたので殆ど肩を落としながら聞く。
だけどその日は違った。
『うむ!華は良く頑張っているからな!褒美だ!』
そう言って目の前に出される大量のさつまいも。
『えっ?』
まさかこんな大量のさつまいもが出されるとは思っていなかった私は目を見開く。
すると師範はにこっと私に笑いかけた。
『華が必死に炎の呼吸を学ぼうと頑張っていたのは知っていた!そしてしっかりとその基礎を学ぶことが出来てきたからな!今日は褒美だ!』
『っ、し、師範....』
『ははっ!そんな顔を赤くするほど嬉しかったか!よし、たくさん食べろよ!』
あの時師範は嬉しくて私の顔が赤く染まったのだと言ったけど。
私はそうでは無かった。
いつもと違うそんな顔で笑えるんだ、と思ったと同時に、柔らかくて熱い感情が私を渦巻いたのが分かった。
どくんどくんと高鳴った心臓とともに顔も熱くなったのが分かった。
そう、あの瞬間から。
私はもう"煉獄杏寿郎"という男に惚れていたのだ。