第3章 見えない壁と恋心『煉獄杏寿郎』
「華!!腰が甘い!もっと引き締めろ!」
「はいっ!師範!!」
ある日の煉獄家では。
そんな声が一日中飛び交っていた。
(...駄目だ。もう目の前がチカチカしてきた)
「はぁ、はぁ、はぁ、師範、一旦、休憩を...」
「うむ!今日もよく頑張った!流石俺の継子だ!!」
そう言ってぽんと頭に手を乗せる私の師範。
「...っ、はい!ありがとうございます!」
そう元気に答える私こそが、炎柱煉獄杏寿郎の継子だった。
そして、私の師範、煉獄杏寿郎は。
もちろん師範であり、
私の、好きな人だった。
--------------------------------
「最近華は本当によく頑張っているな!」
「え、」
修行終わりのある日。師範が私に向かって笑いかけた。
「もう少ししたら炎の呼吸も極められるほどに上達しているぞ!」
「え、ほんとですか!?」
「あぁ俺は嘘は言わない!」
にこっと笑いかけてくれる師範にまた私も笑みを返すと同時に..
(師範、今日もかっこいいなぁ...好きだなぁ。)
静かに育てていた思いを、心の中で反芻した。
私の日輪刀の刀身は師範と同じ炎のような紋様に真っ赤な色を身に纏っている。
私が何も鍛錬をしていないときに遊びで握った日輪刀がこのように赤く染まってしまい、周りの大人が騒いでいる中、師範が来て私を継子にしてくれた。
「いやぁそれにしても華が握った初めての刀身を見たときは驚いたな!」
「うう、その話はもうしないでくださいよ...師範の刀だってわからなかったんです。」
実はあの刀は、師範のものだったのだ。
だからこそ正直めちゃくちゃ恥ずかしいと自分では思っている。
(勝手に触った刀が日輪刀だったなんて知らなかったもん....)
もし私が日輪刀なんか触っていなければこうして師範のもとに来ることも一生無かったと思う。
それはもちろん、私は両親もピンピンに元気だし、誰も鬼に殺されていない。
本当にたまたまあった日輪刀を私が触ってしまったのだ。