第2章 気づくまでのタイムリミット『冨岡義勇』
そもそも色恋沙汰に義勇さんが興味がないことは知っていたし、そもそも義勇さんにそんな期待を抱くことすら間違ってる気がする。
(よし、言おう。)
努めて自然に言えば義勇さんもさらーっと受け流してくれるはず。さらーっと。
「あの、義勇さ....」
「俺は斬れなかった。」
「...は?」
私が声をかけようとした途端、義勇さんがまた意味のわからないことを口走る。
(人が話そうとしてるのに...)
「あの、それどういう...」
「お前の形をした鬼に会った。お前じゃないと分かっていても、ギリギリまでその鬼を斬れなかった。」
「...えっ」
何だか私が体験したことと似てることが義勇さんの口から放たれて、まじまじと義勇さんを見るも、義勇さんはじっと地面を見つめているだけだ。
「え、あの、義勇さん...?」
私がそう名前を呼ぶと、ぴくりと反応した義勇さんが今度はスタスタとこちらに近寄ってくる。
(え、な、なに...?)
そう思っていると、義勇さんがまじまじと私の顔を見てきた。
「....」
「....」
変な沈黙の時間に何だかいたたまれなくなって声を上げようとすると、
「...やはり、そうか。」
「...え?」
小さく何かを呟いたかと思うと今度はせきを切ったように喋りだした。
「俺は以前から、お前に会うと心臓が変に鳴った。道端で会うときも、任務で出会うときも、お前に会うと変にどくどくと高鳴りだした。」
「え、」
義勇さんから言われたことに頭がついていかない。
(え、それってまさか私と同じ...)
そこまで思ったとき、私は頭をぶんぶんと横に振った。
(いやいや、義勇さんがそんなことに興味があるわけない。期待なんて捨てろ捨てろ捨てろ....)
そう強く念じていると。
「そこで俺は、ひとつの結論に至った。俺は....」
「お前のことが、好きらしい。」
「へ....!?!?」
義勇さんから放たれた言葉に先ほどとは比べ物にならないほど頭が混乱する。
(え、好きって、え、私と同じ、いやでも....)
驚きすぎて私が硬直していると...