第2章 気づくまでのタイムリミット『冨岡義勇』
「....なんだ、返事はしないのか。」
「え、いや、でも義勇さんはそんな色恋沙汰に興味はないんじゃ....」
(だから私期待しなかったんだけど...)
今起きていることが何だか現実的じゃなさすぎて夢じゃないかと思ってしまう。
私が恐る恐る聞くと全く表情を変えない義勇さんがぴくりと眉をひそめた。
「...もともとは無かった。甘露寺がたまに口に出していたが、そんなもの食えるのかぐらいにしか感じていなかった。だが...お前と出会って変わった。」
「え、」
「体の中が燃えるように熱くなって、お前に対して何度も視線を向けるようになった。そうだな、例えばお前のその大きくて丸い瞳とか....」
「え、ちょ、やめてくださいっ!!」
具体例を出そうとした義勇さんにそれは恥ずかしすぎるので必死に抑える。
(そんな具体例出されたら恥ずかしすぎて生きていける自信ない...!!)
すると義勇さんはそんな私をじっと見て数秒後にふっと笑った。
「...恥ずかしいのか。」
「!!」
(初めて、見た。義勇さんの笑顔....)
月明かりで照らされた柔らかいその表情はこれまで見たことがないものだった。
それに、否応なしに顔の熱が上がっていくのが分かる。
(今が夜でよかった...)
昼間だったら顔が赤いことにも恥ずかしくなって、の永遠ループに陥るところだった。
(っ、どうしよう嬉しい、けど...言葉が出てこない。)
初めてみたその表情と、初めての感情に何も言えずに義勇さんを見つめていると...
「....返事は。」
「!」
そう言われて初めて返事をしていないのを思い出す。
「あ、私は....」
「華が嫌なら別に俺は何もしない。このままの関係でやっていける。」
「え、」
私がまだ何も言っていないのに喋りだす義勇さん。
「お前にこの気持ちを伝えて迷惑をかけるつもりは無かった。だから別に遠慮するな。」
「っ、いや、私は...」
「別にお前が断っても俺達の関係は何も変わらない。今まで通りに過ごせばいい。つまり....」
「っ、私も好きです!!!」