第2章 気づくまでのタイムリミット『冨岡義勇』
そして私も次の瞬間には東の方角へと飛び去った。
(よしっ、これで15体目)
鬼を15体倒してようやくほっと私は息をつく。
この森には鬼が約30体いると義勇さんから聞いた。
こちらで15体倒したなら向こうでも15体ほど倒しているだろう。
私は水色に染まった悪鬼滅殺と書かれた刀をそっと鞘に戻す。
その時だった。
「うァァァァ!!!!」
「!」
横から鬼が飛び出してきた。
「っ、まだいたの....って、え?」
飛び出してきた鬼を見て驚いた。
その鬼はなんと....義勇さんの姿形をしていたから。
(っ、落ち着いて、これは異能の鬼。落ち着けば斬れる。)
これまで何百と鬼を倒してきた私だ。一応どんな鬼かくらいの判別はつく。
(人を30人ほど喰ってる。でも鬼舞辻無惨の血はあまり濃くない。)
よし、これなら斬れる。
「------空の呼吸 参の型....っ」
私が使っている空の呼吸を出そうとしたとき。
その義勇さんの形をした鬼が素早く切りかかってきた。
いつもなら雑作もなく鬼の頸を斬り落とすのに...
何故かその時の私は、それが出来なかった。
「っあ....っ!!!」
もろに鬼の攻撃を受けて地面に転がる。
するとその義勇さんの形をした鬼はニタリと笑った。
ぞくっ....
普段見ることのないその闇のこもった笑顔に不本意ながら鳥肌が立つ。
その時。
「おいお前、こいつの姿だと俺を斬れないんだろ。」
「っ...!」
鬼が話しかけてきた。
「こいつは俺が間一髪で逃げ切ったやつの姿だ。鬼殺隊の格好であれば柱でも誘惑できると思ったが....お前は違う意味で斬れなさそうだな。」
(違う意味...?)
その単語が理解できなくて思わず鬼の言った言葉を反芻する。
すると更に鬼が口を開いた。
「俺はお前を見て分かった。お前、こいつのことを慕ってるんだろ。」
「....!?」
(慕って、る...??)
私が?義勇さんのことを?
(嘘、嘘だ、そんな....そんなわけ。)
私が義勇さんを好きだなんて、そんなわけ、ない。