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ゼルダの伝説 時を超えて

第1章 第一章



馬に乗ったその化け物は私を掴みながら絵の中を走り続ける。
世界は狂っていた。紙のように薄っぺらい木々が覆う道は筆で描いた跡が残り、走り続ける道の先には何もないように感じる。

こわい。

両手が震えていた。このまま殺されてしまうかもしれない。

〜うろこ…〜

誰かが私を呼ぶ声が聞こえる。

〜うろこ…!〜

突然強い痛みが頭を覆う。悶えるような苦しみの中で私は何かを見ていた。

「………、本当にそれが必要なの?」

長い金髪の少女が海に尋ねる。

「えぇ、必要よ」

海にいるであろうその声の主。その姿は少女に重なり見えない。

「何れ来る未来のために、リンクのために」
「でも、そんな未来が来るなんて私は…」
「信じられないかもしれない。でも絶対来る未来なの」

痛みが私を呼ぶ。

「影がこの世界を覆う前に…!!!」

バチっと光った視界の奥で彼女は此方を見ていた。
視界が暗転すると同時に私を呼ぶスカイさんの声。

「うろこ!!!!!!」

ふわりと体が宙を浮く。化け物が痛みで叫んでいるのだけが聞こえた。
次いで私をガッシリと掴むたくましい腕。薄らと目を開けると動揺した青い瞳が此方を見ていた。

「スカイ、さん」
「よかった…!!!」
「私……」
「絵画の中に連れて行かれたんだ。もし、あいつが君を連れて戻ってこなかったらと思うと…」

抱きしめる腕に力が入る。頭の中を占めていた痛みが和らいでいくのを感じた。

「スカイさん、あのね」
「ん?」
「もしかしたら、私達が求めているもの、絵画の中にあるかもしれない」
「え!?」
「タダの勘だけど、信じてくれる?」

彼は私の瞳を真っ直ぐ見つめて頷いた。

「信じるよ」

彼は私をゆっくりと下ろす。私はよろけながらもしっかりと地面に立った。
2人で見たその視線の先には未だ紅い瞳が揺らめいていた。

「だけど、絵画の中に入るなんて…一体どうやったら…」
「とにかく、アイツを倒さなきゃ」

スカイさんが剣を握り直した。戦力にならない私を背中に隠し、敵と対峙した。光の速さで襲ってきた化け物の剣を受け止め躱す彼を目で追うのがやっと。
祈る両手でただただ、終わりが来るのを待っていた。どうして私には剣を振り回す力がないんだろう。

「っ…」
「スカイさん!!」

彼の右腕から血が流れる。
それでも彼は止まらずに剣を振り続けた。
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