• テキストサイズ

ゼルダの伝説 時を超えて

第1章 第一章



揺らめく水底に映る微かな光。私は呆然とそれを見ていた。
響く誰かの声……。

「なあ、勇者様。何時になったらワイを迎えに来てくれるん」

何処かで聞いたことのある女の声は、何かを見つめながら呟く。

「こんなに想っとるのに」

彼女は何を……いや、誰を見つめているのだろう。私は其れを見ようとその光に顔を近づけた。


「うろこ!!」
「はぇ!?」

ボスッ…といい音とともに自身の顔に毛布を押し付けられ目を覚ます。

「もうっ、何時迄も寝てるんじゃないよ」

毛布をどけて寝惚け眼で見た姐さんは呆れた顔をして此方を見ていた。

「え、もうハイラル!?」
「あんたが寝て何時間経ったと思ってんだい」
「だって…馬車の揺れてる感じと日差しが…ね!」
「ボケッとしてないでそこの湖で顔洗ってきな!
折角、美人だと言われるあのゼルダ姫に献上品を届ける命を私達が承ったのに、そんな寝癖だらけじゃ門前払いされちまうよ」
「すぐ行ってくる!!」

急ぎ足で馬車を降りて開けた世界に私は感嘆の息を吐いた。何処までも続く草原と雲ひとつない空が私を歓迎してくれていた。

聖地ハイラル。不思議な森と輝く湖、灼熱の砂漠に燃える火山。創生の女神達が最初に舞い降りたため聖地と呼ばれているが、人々が賑わい活気のある素敵な国だが、城壁についた傷はまだ生々しい事件を鮮明に思い出させた。
6年、いや7年前だろうか。今はハイラルとされるその場所がまだゲルド族達の住処とされ、どこの国にも属していなかったとき。当時のゲルドの長が魔物を引き連れハイラル城を収奪《しようとしていた》、というニュースは当時、幼かった私でも鮮明に覚えている。
その事件は私と同世代でありながら聡明だったゼルダ姫により失敗に終わり、そのまま創生の女神達に力を与えられし賢者の手によって彼は別の世界へ封印されたというが、それだけで事件が終わったわけじゃなかった。
その策略は確かに失敗したけれど、被害がなかったわけじゃない。燃えたハイラル城下町の復興は今も尚、続いている。

そこでゼルダ姫はゲルド族だけでなく、私の住む隣国マーロンとの友好条約を結んだ。そして年に一度、友好の証として互いの使者がそれぞれの城に特産品を献上することを約束した。
それが私と姐さん、そして姐さんの旦那さんが今、ハイラルにいる理由である。
/ 29ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp