第6章 七海の覇王
唯一見つけた暗い路地の隅で座り込み、膝に顔をうずめる。
表通りとは違う、牢を思い起こすような狭さと湿気。
「結局……何も変わってないじゃない。」
呟いてみるが、返事をしてくれる誰かはいない。
寂しさなんかもう慣れて感じないと思っていた。
「シンドバッド王のばーか。」
顔を膝に埋めて溢れるように呟いた。
「一国の姫がそのような言葉使いではいけませんよ?」
明らかに自分へと向けられた声にハッとする。
表通りの明かりにシルエットとして映し出された影は、ゆっくりと近づいてくる。
わずかな風に顔を上げると、屈んで自分と目を合わせたジャーファルが笑っていた。
「あ…ジャーファル…さん。」
「ジャーファルで構いませんよ、姫様。王が大変失礼しました。
一緒に城へ参りましょう。」
ふわっと笑うジャーファル。
そっと手を差し出され、ほっとした自分がいた。
でも……
「ッ……。」
先ほどのシンドバッドのことが頭をよぎり、カナはその手を払う。
「ご、ごめんなさい……。」
始めは手を払われたことに驚くような顔をしていたジャーファルだが、カナを落ち着かせるようにそっと頭を撫でた。
「こちらこそ失礼いたしました。姫君に容易く触れるものではありませんね。こうするのはいかがですか?」
そう言ってジャーファルは自分の袖裾をカナに差し出した。
「城までは人で賑わっています。こんなものでも、あなたを導く役にはたつかと。」
カナは少し戸惑ったが、大人しくジャーファルの袖を掴んで歩き出した。