第6章 七海の覇王
見渡す限り人、人、人。
少年が草むらを掻き分けて走り回るように、シンドバッド王はその人の波をぐいぐいと進んで行く。
「あら、王様!」
「王様、今日はいい魚が獲れましたよ!」
「そうか、これからも励んでくれ!」
「王様!今度うちの店にも遊びに来てくださいな!」
「ありがとう!近いうちに寄らせてもらうよ!」
あちこちからシンドバッドに声がかかる。
その声に彼は軽快に手を振ったり、子どもの頭をぽんっと叩いたりしながら歩み進める。
歩くだけでこんなにも国民に慕われていることがわかる王様が他にいるだろうか。
本来なら皆ここで王のカリスマ性に歓喜するのだろうが、カナにとってはそれどころではなかった。
なにしろ人が多すぎる。
人との距離も関わり方もわからない、もしろ他人と近づきすぎることを恐れているカナにはこの空間は苦痛でしかなかった。
その場から動けずにいると、どんどんシンドバッドの姿は遠くなってしまった。
「待って、シ…シンドバッド王!」
知らない場所、人との近すぎる距離に、心拍は上がり呼吸が早くなる。
思うように足が前に動かない、
「あっ」
再び顔をあげた時にはもう、完全にシンドバッドの姿は見えなくなってしまった。