第5章 海を渡って
それからカナは教養や国の政治、世界の王の存在や金属器について毎日代わる代わるやって来る文官や有識者達に叩きこまれた。
それから2ヶ月が経とうとしたある夜。
いつも時間ぴったりに先生が来るのに、今日はすでに時間が過ぎている。
ぎいっとようやく開いたドアの方を見ると、様子がいつもと違った。
「今日は紅明様が先生ですか?」
「ええ。遅くなりましたが始めましょう。」
淡々と進む話の中で、特に紅明が強く話すことがあった。
「……七海の覇王、シンドバッド…。」
「はい。彼は金属器を7つも保持し、一代で国を作りあげた男です。また七ヶ国と同盟を結んだ七海連合の秘めたる力は強大なものです。我が国が最も重要視している相手と言っていいでしょうね。」
「シンドバッド王の、シンドリア…。」
「興味がお有りですか?」
紅明の心を覗かれるような視線に目をそらす。
「いえ、幼い頃から他国を見たことがないので、どんな国なのだろうの思っていただけです。」
「それを聞いて安心しました。兄王様があなたを呼んでいましたから、行きましょうか。」
『紅炎様が?』
沈黙に気まずさを感じつつ廊下を進んでいると、紅明は一つの扉の前で足を止めた。
「兄王様、紅奏を連れてきましたよ。」
入れ、と低い声が聞こえると紅明は扉を開けた。
カナはまず室内の様子に目を丸めた。
床を見ても壁を見ても本に埋め尽くされた部屋。しかし紅明は慣れたように足を進めるため、それにカナも続いた。