第7章 ②心が迷うたび、君の元へ。/天窓【月島】
「き、綺麗ですねぇ……」
「……ああ」
月島さんは小さく囁くように呟き、再び天窓の夜空へと視線を戻すのだった。
少し身じろぎをするだけで、すぐに月島さんの肩と触れ合う。
そのたびに、思考がそちらへ引っ張られそうになる。
「月島さん」
「はい」
「星好きですか?」
「……考えたことがない」
「え?」
「この天窓があることは知っていたが……」
少し間を置いて、彼は静かに続ける。
「ここから星を眺めるという発想は、なかった」
「もったいない!」
こんなに綺麗なのに!と、悔しがるような私を見て、月島さんはフッと目を緩めた。
「……そうだな。あなたに教えてもらわなければ、気づかなかった」
「じゃあ、また一緒に見ましょう」
「……うん」
その一言に、彼の肩から少しだけ力が抜けるのが伝わってくる。
それから、そっと伸ばした月島さんの指先が、私の手に触れた。
ハッとして横を向く。
「……?」
「……手を」
月島さんはわずかに視線を逸らし、気恥ずかしさを隠すように呟いた。
「繋いでいてもいいか」
「はいっ」
差し出された手に、迷わず自分の指を絡ませる。
満足したのか、彼はまたそっと天窓へと視線を戻した。
「月島さんと一緒に星見れて、なんか嬉しい」
しばらくの間、静寂が流れた。
「……月島さん?」
「……はい」
返ってきた声はいつも通りで、表情もほとんど変わっていない。
ただ、繋ぎ合わせた手だけが、先ほどよりも少しだけ強く、ぎゅっと握りしめられていた。
「……?」
不思議に思って指を動かすと、彼の指の間が擦れ、ぴく、とほんのわずかに彼の指先が反応する。
「……あまり動かすな」
「へ?」
「……いや」
短く熱を帯びた息が吐き出される。
「そのままで」
「はい」
言われるがままに手をそのままにすると、再びまっすぐに天窓の星空を見上げるのだった。
「あ、あの星さっきより明るく見えます。目が慣れてきたのかな?」
「……そうかもな」
ふと横を向くと、また月島さんと目が合った。
「月島さん、ちゃんと見てます?」
「見てる」
「ほんとですか?」
「……はい」
少しだけ間が空く。
「私は星じゃないですからね?」