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第二補佐官は第1補佐官の嫁です【鬼灯の冷徹】

第14章 地獄アイドルピーチ・マキ


"あの世鉄道カンパネルラ号、間もなく発車致します"

貴方「……鬼灯、まだかな」

珍しく夫婦揃って視察へ出る予定のその日、瓜美は一人、特急列車の乗口で溜め息を吐いていた
仕事の都合上、駅のホームで鬼灯と合流する予定だったのだが、約束の時間になっても待ち人は現れず、ついには列車の発車時刻となってしまった

貴方(きっと仕事が次々舞い込んできて時間が押してるんだろうな。まぁ次の列車で追いかけてくるよね)

一本遅れたところで支障はないだろうと瓜美は特に気にせず、先に列車へと乗り込んだ
僅かな期待を込めてギリギリまで乗口で待ってみたが、ついに発車のベルが鳴り響く
瓜美が閉まり始めた扉に背を向けて座席へ向かおうとしたその時

ガッ メキメキメキ

完全に閉じようとしていた扉に外側から手がかけられたと思ったら、不吉な音と共にゆっくりと無理矢理抉じ開けられた
予想外のことに瓜美と通りがかった車掌が固唾を飲んで扉を見つめていると、扉の隙間から表れたのは、疲れきって目の据わった恐ろしい形相の鬼だった

鬼灯「天の岩屋戸風乗車ならOKですか?」

駅員「……てもう乗っちゃってる...から...ハイ」

貴方(思いきり手形に凹んだ扉の修理代は経費で落ちるかな)

貴方「…一本くらい遅れたって大丈夫なんですから、そんな無理に乗り込んでこなくても…」

鬼灯「折角瓜美と視察に行けるんですよ。移動時間でさえ無駄にはできません」

貴方「///」

座席に向かいながらなんとなしに振った話題だったが、思いのほか嬉しい答えが帰って来て瓜美は頬を弛めた

鬼灯は後ろを歩く瓜美の左手をそっと握った
すぐにきゅっと握り返される優しい力に益々笑みが溢れる
それは瓜美も同じことなのだが、生憎狭い通路を前後に並んで歩いている今の状況では鬼灯がそれに気付くことはなかった

貴方「えっとD列…D列…」

乗車券に記載された番号を確認しながら座席を探す特急内は三人掛けシートと二人掛けシートが左右に並んでおり、今回二人が取った席は三人掛けシートの内の二席らしい
ようやく指定されたD列を見つけた鬼灯と瓜美が座席に目を向けると

鬼灯・貴方「「…………」」

奥のD-1席に大きな桃が座っていた
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