第10章 三匹が逝く!
部屋の中には金魚草グッズやコンテストのトロフィー、鬼灯が趣味で集めた食玩などがそこかしこに飾られていた
柿助「結構、収集癖があるタイプなんだな」
貴方「一度気に入ると凝る人ですから。そちらの扉が寝室の様子見てきてくれませんか?私は軽く何か作るので」
シロ「え、瓜美様も一緒に行かないの!?」
貴方「大丈夫だですよ。資料とか薬学関係のものが山積みでゴチャゴチャしてますけど気にしないでくださいね」
そうして隣室に繋がる扉の向こうへ三匹を追いやり、瓜美はキッチンで食事の準備を始める
仕事が忙しいとついつい食堂で済ませてしまうが、時間がとれる時は出来るだけこうして自炊するようにしているのだ
貴方(ついでに私もお昼にしよう。鬼灯は寝起きでも割りとしっかり食べるから楽だなぁ。シロさん達も食べるかな?一応お肉とお芋と……さすがに虫はないなぁ。お米か麦…木の実とかでいいかな)
動物もいるためダイニングテーブルではなく和室に手早く食卓を整えていると、隣室から三匹の楽しげな歌声が聞こえてきた
どうやらアメリカンホームドラマとは少し違うが、アットホームな雰囲気にはなっているようだ
そして歌がサビに差し掛かった頃、それはシロの悲鳴に変わった
鬼灯が起きたのだろうと予測した瓜美はすっかり準備の整った食卓を後にし、隣室への扉を潜る
そこには予想通り、寝台から身を起こした鬼灯と怯えきった三匹の姿があった
鬼灯「徹夜明けの爆睡は無理に起こされると辛いんですよ……勘弁してください」
貴方「寝てばかりもよくないでしょ。あとでお昼寝してもいいから、一度何かお腹にいれないと。どうせ昨日の夜も忙しさにかまけて食べてないんだろうし」
瓜美はクスクスと笑いながら近づき、いつもの黒い着物を広げて鬼灯の着付けを手伝い始めた
その手つきはかなり手慣れたもので、鬼灯が当然のように受け入れていることからもそれが毎日の日課であることが伺える
服装が整うと、今度はピョンピョンと跳ねた鬼灯の髪を直すように優しく撫で付ける
その感覚に鬼灯はまた眠りに落ちそうになるが、愛しい妻が用意した食事を無駄にせるわけにはいかない
グッと堪えて洗面所へ向かい、身支度を始めた
ちなみにその様子をずっと見つめていたシロによると、桃太郎の寝起きは凄いらしい
誰得にもならない情報だ