第10章 意識し始めた頃
「えっ、俺っすか?」
「そう、お前」
クマラに覇気の練習相手になって欲しいと言われたのは、先日の件で相当落ち込んだクザンのみであった。サカズキやボルサリーノは急遽海賊討伐に選抜されてしまい、海軍本部にはいない状況の為である
ロギア系の能力者がクザンしか居ないと言うのもあり、二人きりでの訓練と知りクザンは有頂天でそれを受け入れた。クマラはロギアに今の自分の覇気が通用するのか、クザンは覇気攻撃をどのようにして回避するのかを学ぶ事が訓練の内容である
「じゃぁ、いつ頃が良いですかね?俺通常の訓練あるんでそう時間取れませんけど」
「なら暇な時にでもガープの部屋に来てくれ。どうせ俺はずっとそこにいる」
「わかりました!」
敬礼をしたクザンにクマラは優しく微笑み、頑張れよと大きく背伸びしてポンと帽子越しに頭を撫でた。クマラとの会話の時、いつも前屈みになる癖をつけてしまったクザンは、撫でられた頭に自分の手を置きつつ歩いて去っていくクマラを見送る
「……それ、卑怯ですよクマラさん……」
顔に集まる熱で、クザンの肌は少しとろけて雫を流した。能力を完全に操作出来ないクザンは、通りがかりの海兵に話しかけられるまで溶け続けたという
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(最近、ちょっとしたことでも胸がドキドキするのに……あんたの口元が緩むのを見るだけで、俺の体はこんなにも熱い)
(分かってる、この気持ちがなんなのかあの時よぉくわかった。じゃなきゃ、あんなに苦しくなんてならない。あんたが生きているとわかっただけで、今の俺が涙を流す程喜べるわけが無いんだ)
(……ずっと、この気持ちを知らないままだったら、こんなに一喜一憂する事なかったろうに)
(初めてこの気持ちを抱くには、あまりにも目標が高いもん好きになっちまったな、俺)