第3章 お仕事
千「ほな、坂田みたいに可愛くお強請りしたら、敬語外して「千良」って呼んでくれる?」
首をコテンと傾げ、所謂困り眉で少ししょぼんとした顔をして、袖で口元を隠して「あかん…?」という殺し文句で泣き落としに。
蕾「わ、わかったで、その顔でこっち見んとって…」
千「わぁい♪蕾さんありがと〜♪」
蕾「…第一印象と全然違うって言われん?」
千「え、めっちゃ言われる。蕾さん凄いなぁ。何で分かったん?」
蕾「アハハ…」
笑って誤魔化すと部屋の外から「お食事の準備が整いました」と男の子に声をかけられる。
千「今行きます〜。はい、蕾さん」
蕾「?」
千「手、出してください」
蕾「…1人で行けるで?」
千「千良が手を繋ぎたいんです。嫌?」
蕾「嫌やないけど…」(後で渉に何か言われそうやなぁ…)
千「♪〜」
上機嫌な千良を見たら「まぁいっか」となり、思考を放棄した。
部屋に着いた途端鋭い視線を受けることになるとも知らずに…。
食事用の部屋に入ると、案の定鋭い視線が刺さった。気にしているのはうちだけで、千良は微塵も気に止めず、寧ろ見せつけるように距離を詰めてくる。
浦「…」
坂「あー!蕾おらんと思ったらセンラと一緒やちゃん!しかも手まで繋いで!いつの間にそんな仲よぉなったん?センラに何もされてへん?大丈夫?」
千「何もしとらんわ!失礼なやっちゃな!」
蕾「ゆ、優君大丈夫やで?千良には何もされてへんからな?」
坂「あれ、蕾ってセンラの事呼び捨てにしてたっけ?」
蕾「あ」
千「俺が呼んで欲しいってお願いしたんよ!お前だけ呼び捨てなんて許さへん!」
浦「……」
自ら墓穴を掘るわ千良がさらに距離を詰めてハグして来るわで、おかしな心労が溜まって仕方ない。
ふと視界に入った若紫さんはというと、この状況を無視して先に食べ始めている。
蕾「2人とも、食事中の人の前で騒いだらあかんよ」
千・坂「「ご、ごめんなさい…」」
蕾「うちとちゃって、若紫さんにな。あと渉にも。うちらの事待っとってくれとったんやで?」
浦「お、俺まで?」
千・坂「「2人ともごめんなぁ?」」
志「いつもの事やろ」
浦「別に気にしてねーよ。早く食べようぜ」
鋭い視線もうるさい騒ぎ声も無くなり、穏やかで楽しい会話をしながらみんなで昼食をとった。