第1章 手に取ったのは
鬼。普通の人なら信じない存在の名前が出て、より警戒心が強くなる。何故今それがでできたのだろうか。まさか、この人が姉さんに何かした…?
「アンタ、何者だよ。何しに、こんな所まで…」
「鬼退治しに来たんだよ」
同じことを思ったらしい椿が問い詰めようとする前に、男は自信たっぷりにこたえた。
「鬼、退治…」
つまりこの人は、鬼を…姉さんを退治しに…?
「鬼の気配がしたからここまで来たんだが…急に消えてな。どこかに逃げたのか、それとも…」
言いながら椿の持つ刀に視線を落とす。わかってて聞いてるの…?意図がわからない。でもきっと答えないままなら椿が自分がやったといいかねない。それで椿に何かあっては困る。
「私が、…首を落としました」
「バカ、八重お前…」
正直に話すと椿はこっちを振り返って眉を顰める。やっぱり私を庇うつもりだったらしい。
「…嘘はついてないな。なるほどわかった」
答えたらどうなるのかと怖かったのだが男の反応はあっさりしていて。そのまま今度は刀のことを訊いてくる。どこで手に入れたのか、もともと持っていたものだったのか。なんでそんなことを訊くのかと問返せば、母の手紙にあった通り鬼を殺すための特別な刀で、さっき言っていた鬼殺隊の隊員が持っているものだと答えられた。
「で、お前たちの…」
「あの、姉の埋葬が終わってからでいいですか?いつまでもこのままなのも、可哀想なので」
この人が私たちに危害を加えることも無さそうだということもわかった。話が長くなりそうなので先に牡丹姉さんを埋めてあげたかった。わかった、と言って待ってくれたものの。椿は片手を怪我しているし土も少し固めだし、でちょっとづつ掘っていると
「だあぁっ地味!遅せぇ!貸せ!」
鋤を取り上げられ、あっという間に穴が掘られ、そこに姉さんを寝かせてまた土をかけてくれて。早く済んでしまった。お礼を言いながら、刀は母の形見で手紙と一緒に入っていたのでどういう経緯でここにあるのかはわからないことを伝える。
「呼吸使って走ってたくせにわからねぇのか?」
「母が生きてる時によく知らないまま教えられたので…」
「流派は?」
「雪です」
訊かれたまま答えると、驚いた顔をされた。