第3章 再会
「結論を出すのはまだ早かろう。ゆっくり考えるがよい」
「考えたって、同じじゃないか。あんなにハッキリと扱いの違いを見せつけられたんだ」
「カラ松様の肉体が死に至るにはまだ時間がございます。それまでこちらにいらして下さいますよう」
「え?戻らないって決めたら、死ぬんだろ?」
「お前の場合は元々丈夫な体であったゆえ、そう簡単には黄泉へは行けぬ。お前の肉体が死に至るまで、ここで過ごせばよい」
「でも、いいのか?」
「他へ行けば、亡者共の格好の餌食になるぞ?」
「ここにいる!!えっと、○○と……」
「馬頭王にございます」
「覚えにくいな」
「どうぞお好きにお呼び下さい」
とは言うものの、馬人間ではちょっとな…。馬………。ああ、おそ松は競馬に行く時、こう言ってたっけな。
「お馬さん」
そう言ったとたん、○○とお馬さんの動きが止まった。その目は驚きに満ちている。
「…………………………………………っくくく……。ははははは!!お馬さんか!そいつはいい!!」
「○○様…!」
笑い方を知らない彼女が初めて笑った。かわいいと思う。
「もっと笑えばいいのに」
知らず、声に出していた。
「地獄にいて笑うことなどないからな」
「たとえ死んだって、俺は笑いを忘れないぞ」
「ああ、そういう気持ちは大切だ。我もこんなに心が軽くなったのは初めてだ。礼を言う」
「私からもお礼を申し上げます。○○様がお生まれになられてからというもの、お笑いになられたのはこれが初めてでございます」
そうか、生まれてからずっと地獄にいたんだな。笑い方を知らないのも無理はないか。
「それで俺の肉体は、いつ死ぬんだ?」
「さあな。お前が肉体に戻らねばいずれは死に至る。ただ今はまだ肉体の力が余っているゆえ、戻ればすぐにでも動けるはずだ」
……さすが俺、ただでは転ばんな。
「ならその日まで、ここにいていいか?」
「好きにするがよい。だが肉体が死に至った時は、地獄か天国に逝くのだぞ」
「え?ここに置いてくれないのか?」
「ここにいては、転生できぬぞ?それでもいいのか?」
「ああ、構わない。○○のそばにいられるならな」
驚いた顔で俺を見た○○は、少し照れくさそうな顔をした。
「お前は我を恐れぬのだな」