第3章 再会
あれからどのくらい経っただろうか。俺たちはいつの間にか心霊スポットも彼女のことも忘れてしまった。
そんなある日、俺はチビ太に誘拐され海で木に縛りつけられたがブラザーたちは来なかった。その夜、同じように木に縛りつけられ、火あぶりされた。その日の最後の記憶は、怒りの形相で鈍器を今まさに投げつけようとしているブラザーたちの顔だった。
気づくと何故か真っ暗な場所にいた。右も左もわからない、伸ばした手がようやく見えるくらいの暗さだ。
「こ、ここはどこだ?!誰か!誰かいないのか?!」
「またお前か」
「その声は、○○さん?!」
だがその姿は見えない。
「馬頭王、案内してやれ」
「はっ」
目の前に馬人間がいた。
「うぉお?!」
「どうぞ、こちらへ」
「へっ?!あ、ああ」
ついていこうとしたとたん、急に視界が晴れた。家の中、いや豪邸の中と言った方が正しいだろう。高級そうな家具や柱が目に入る。
「お掛けください」
「あ、はい」
促されるままソファーに座る。
「おぉおおお?!」
思った以上に体が沈んだ。思わず手が上がる。ふと見ると正面に彼女がいた。
「○○さん……」
「呼び捨てで構わぬ。お前はなぜここに来たのか、わかってはおるまい」
「どういうことだ?ここはどこだ?」
「生と死の狭間だ。お前は今まさに、その状態なのだ」
「もっと分かりやすく言ってくれ」
「お前は今、体から魂が抜け出た状態なのだ。だからといって、死んだわけではない。人間の言葉で言うならば、植物人間というやつだ」
俺はブラザーたちが鈍器を持っていた時のことを思い返した。あれは俺に投げつけられたのか…。言い様のない寂しさが、悔しさが溢れる。
「ブラザーたちは俺のことなどどうでもいいのか…?俺は必要とされていないのか…?」
「戻るか否かはお前が決めることだ。但し戻らぬ選択をした場合、お前は本当に死に至る」
「……ブラザーたちの気持ちが知りたい」
「馬頭王」
「はっ。カラ松様、どうぞ」
馬人間は目の前に大きな水晶玉を置いた。
「これは?」
「お前の身近な者たちの様子を見ることができる」
見ればブラザーたちは傷だらけでフレンドを抱える十四松と一緒に、一松を迎えに行っていた。
「!!!……俺は戻らない!戻っても意味がない!必要とされてないんだ」