第4章 地獄より愛を込めて
「しかし…!」
「我のことは案ずるな。2千年もこうして過ごしてきたのだ。慣れている」
「でも、泣いてるじゃないか」
そう言うと、しゃくりあげる声が聞こえた。
「お前とのひとときは、楽しかった。笑うということを教えてくれた。人を愛するという気持ちを教えてくれた。カラ松には、感謝するより他はない」
「○○も一緒に行こう」
「それはできぬ。我は父上の後を継がねばならぬ」
「そんな…!大好きなんだ!愛してるんだ!」
「我も……愛している…!だが我は、地獄界の者だ」
「俺も地獄界の人間になる!」
「駄目だ!お前は帰れ!」
○○が俺を引き離した。涙でぐしゃぐしゃな顔をしている。たぶん俺も同じだろう。
「お前はお前の人生を、全うして来るがよい。我にとっては一瞬だ」
「けど…!」
「行け、カラ松!」
「その前に!」
俺は○○を引き寄せ、唇を奪った。
「俺は…松野カラ松は、生涯○○を愛します」
○○の目から大粒の涙が流れる。
「愚か者めが…!!行け!」
泣きながら、俺の背中を押した。ただその力はあまりにも、弱々しかった。
「…わかった。お前も一緒にな!」
○○を抱きしめる。
「…………馬鹿ぁ!馬鹿ぁ!私がそっちに行ったって、父上の後を継ぐことに変わりはないんだからぁ!」
初めて聞いた、女の子らしいしゃべり方。かわいくて、愛しくて。
そんな俺たちを引き裂くように闇から無数の手が伸びて、俺を捕まえようとした。
「うわあっ!」
「行け、カラ松!」
○○が手を力で押さえている。
「○○も来るんだ!」
「動けば手どもを押さえきれぬ!お前だけでも行け!光に向かって走れ!」
「いやだ!○○も一緒だ!」
「カラ松様!○○様の御心をお察しくださいませ!」
「カラ松!幸せになれ」
「馬鹿言うな!俺の幸せは、お前と一緒にいることだ!」
「生きろ、カラ松!」
○○の声が、お馬さんの手が、俺の背中を押した。
「○○!俺はお前を忘れないぞ!ずっとお前を待ってるからな!愛してるぞ!」
まぶしい光に包まれて、気づけば病院のベッドにいた。
「カラ松が意識を取り戻したぞ!」
おそ松の声がする。
「カラ松兄さん!」