第4章 地獄より愛を込めて
「くs…カラ松、ごめん」
「カラ松兄さん、こんな目にあわせてごめんなさい。今度一緒に野球しよ?」
「これ、カラ松兄さんがいなかった時に食べちゃった梨だよ。剥いてあげるね」
ブラザーたちがいる。でも、○○がいない。
「○○は?」
「え?誰、それ?」
「俺の大切な人だ」
「夢でも見たんじゃね?お前、あの夜からずっと、ここにいるじゃん」
………そうだ。俺はあの夜に、生と死の狭間にいたんだ。だが…。
「どのくらいになる?」
「3日くらい」
「………3日か…」
その3日の間に俺は、こんなにも○○を愛したのか。自然と涙が出る。
「えっ。カラ松、どこか痛いのか?」
「俺は…生と死の狭間にいたんだ。そこで○○に恋をした。だがっ……!俺は○○を…!○○を置いて来てしまったんだ……!ブラザーたちのところに戻れと、幸せになれと言って…俺の背中を押したんだ…」
俺は泣いた。声を殺して泣いた。
退院してしばらく経った頃。
「ごめん下さいませ」
誰か来たな。母さんが対応した。
「はーい」
「この度向かいに越して参りました、比良坂と申します。何かとご迷惑をおかけするかと存じますが、よろしくお願いいたします」
「まあまあ、ご丁寧に。こちらこそ、よろしくお願いします」
「つまらないものですが…」
声を聞いた俺は、急いで階段を降りた。
「カラ松!お客さんの前でしょ!」
「!!!」
「………カラ松……!」
「えっ?あら、お知り合い?ふふふ。じゃあ母さんは下がっておくわね」
間違いない、○○だ。お馬さんも一緒だ!思い切り○○を抱きしめる。
「お前、どうしてここに?!」
「父上に叱られたの。人間に恋をするとは何事だ?!って。で、人間界に落とされて、それからカラ松を探してたの」
「お馬さんも一緒にか?」
「カラ松様。今の私は馬頭(まがしら)と申します。お見知りおきを」
「ずっと一緒だよ、カラ松」
「ああ、もちろんだ!」