第4章 地獄より愛を込めて
「力不足?」
「ああ。強い力を持つ霊の集合体となると、真言や剣が必要になる。それらを使わずとも屠れねば、時期閻魔にはなれぬ」
「○○は閻魔になるのか?」
「娘だからな」
「どうしてもか?」
「えっ」
「継がなくてもいいなら、一緒に暮らし」
後ろからお馬さんが咳払いした。
「おしゃべりはそこまででございます」
「あ、ああ。すまぬ」
「す、すまない」
目の前にはトンネルがあった。生暖かい空気が漂っている。一歩踏み入れたとたん、吹き飛ばされそうなほどの風が吹き荒れた。
「行くぞ」
「ああ」
○○とお馬さんはその風をものともせず、トンネルの中を進む。俺はというと、二人についていくので精一杯だ。すぐそばにいるはずなのに、気を抜くと見失ってしまいそうで怖い。
「カラ松」
「なんだ?」
「お前の額に与えた力を思え」
「額に集中なさって下さい」
言われた通り、額にもらった力を思い出してみる。すると額が熱くなっていくのを感じ、それと共に今まで風で歩きづらかったのが、嘘のように身軽になった。
「おお!すごいな!」
「まだ油断はするでないぞ」
「そうだな」
気を抜くのは、ここの霊たちがいなくなってからだ。進むにつれて風が強くなる。風の音が、霊が泣き叫んでいるように聞こえる。
「聞こえるか、霊の声が」
「ああ、泣き叫んでいるな」
「泣き叫んでいるのではない。我らに出ていけと怒鳴っているのだ」
「そうなのか?」
「霊にとってここは、住み処なのだ。住み処に知らない者が土足で上がり込んでいるという認識だな」
その言葉にはっとした。そうか、何気なしに心霊スポットに行くということは、人の家に無断で靴のまま上がり込むのと同じなのか。そりゃ霊も怒るというものだ。
「こうしてみると、つくづく我の力不足を認識させられるな」
「なぜだ?」
「父上ならば、この場に足を踏み入れた瞬間に霊は黄泉へと赴くだろう。もっと力をつけねばならぬな」
そういう○○の手が、口惜しそうに握りしめられていた。そうこうするうちに霊が攻撃を仕掛けてきた。よほど力のある霊なんだろう。○○の足につかみかかった。
「くっ!!」
そのまま引きずられる。
「○○!!」
手を伸ばしたが、遅かった。
「今助ける!」