第1章 無遠慮な神様
寝て起きたら幼児の姿で座り込んでいた。
母も父も知らない人になっていて、いないはずの兄が出来ていた。
周りは豊かな緑に囲まれており、ほとんど自給自足の生活をおくっている。
周りの人は皆着物を着ており、娯楽物の類いはまるでない。
文明が、時代が違う事に気づくのはすぐだった。
頑張ってはみたが、子供らしい子供にはなれなかった。
子供らしい演技だとか、自分の言動を偽るのが呆れるほど下手くそだった。
私には刀の才能があった。それしか、なかった。
他に何も持ってなかったし、持てるような器量も、残念ながらなかった。
幼い頃の私にとっては、鬼も人も変わらなかった。
どちらも私を害するものだったから。
鬼の方が敵意が本能的な分、向き合うのに楽だったと言ってもいい。
刀は私から人を遠ざけたけど、その孤独は確かな安堵を伴っていたのだ。
たとえそれが、かりそめの安寧だとしても、私は一向に構わなかった。
かりそめでも安寧は安寧で、ある種気楽でもあったのだから。
安寧をぶち壊す音が飛び込んでくるまでは、そう、思っていたのだ。