第1章 春は出会いの季節です。
今泉くんの発言に、やはりこの人は人のことをよく見ているなと感心する。
実は最近、少しだけ新生活に慣れてきたものだから調子に乗り、溜まってしまったアニメを一気見したりなど夜ふかしをする日が続いていた。
「あはは…気のせいじゃない。ちょっと好きなことやって夜ふかししちゃってて…」
「……アニメか。」
「はい、部活に支障無いようにしますので、未来の主将!」
今泉くんは軽くため息をついたあと困ったように笑う。
「ほどほどにしろよ。合宿行かれなくなったら困るだろ。」
「はーい…」
「あ、それと。一番上のCD、寝るときにかけるとよく眠れるぞ。」
「そうなんだ、ありがとう!早速今夜からやってみるね!」
私がそう言うと、今泉くんはまたフッと笑う。
それが不思議でじっと見つめ返すと、彼は口を開く。
「そういう素直なところも、やっぱり小野田に似てるな。」
それだけ言うと自分の教室へと姿を消す。
自分自身では小野田くんに似ているのかどうかなんてよくわからないけれど、今泉くんが言うのならそうなのかもしれない。
それに褒められているようだったから、素直に喜んでおこう。
今夜は早めに今泉くんから借りた音楽で眠りにつこう。
そう思いながら借りたばかりのCDを大事に抱え、私も自分の教室へと戻っていった。