第1章 春は出会いの季節です。
そう言って彼は一旦自分の教室に引っ込んでしまう。
かと思えばまたすぐに取って返し、私のところまで戻ってきた。
その手には紙袋。
「これ、たまたま今日持ってたから貸す。」
手渡された紙袋の中身を覗くと、数枚のCDケースが見えた。
一番上のCDジャケットには、英語の文字が踊る。
「え、CDたまたま持ってたの?」
「あ、いや……そう、貸してたのがたまたま今日返ってきてな。」
「ああ、そうだったのね。ありがとう、じゃあ借りちゃうね?取り込んだらすぐ返すから!」
「あ、ああ。」
「じゃあまた後で!」
CDの入った紙袋を軽く掲げ、自分の教室へと戻ろうとしたとき、背後からもう一度声がかかる。
「。」
「ん?」
「最近、寝不足だったりすんのか?」
「え?なんで?」
「ここ何日か、疲れたような顔してる気がしたから…気のせいかもしんねぇけど。」