第1章 春は出会いの季節です。
後ろからの声に今泉くんと二人で振り向けば、そこには小野田くんと鳴子くんの姿が。
鳴子くんは形相を変えて私に迫る。
「な、なんで泣いとるんや?!スカシにいやらしいことでもされたんか!!?」
「するわけないだろう、お前じゃあるまいし」
「なんやてー?!」
「俺はお前みたいに付き合ってもいない女子にベタベタ触る趣味はないからな。」
「うっさいわワイかて好きな子限定やー!!」
鳴子くんが来て一気に騒がしくなったら、涙も自然と引っ込んでしまった。
代わりに笑顔が溢れてくる。
二人のやり取りは、やっぱり面白い。
先程の一件で私は完全に今泉くんを信頼した。
きっと彼なら私が本当に好きなもの、受け入れてくれるだろう。
頃合いを見て、今泉くんに話しかける。
「ねえ、今泉くん。」
「?」
「魔法少女でもいい?」
「……………は?」
最初は、なんのことだ?という表情をしていた彼だったけど、一拍置いて「ああ」と理解したように呟いた。
「魔法少女って言っても子供向けじゃなくてね、死生観とか不条理とかすごい色々深くて私一番好きで…」
「分かった、今度貸してくれよ。持ってんだろ。」
「う、うん…………!!」
思いがけない展開にまた涙が出そうになるけど、そこはグッとこらえる。
「魔法少女がどうかした?!!」
魔法少女というワードを聞き逃すはずがない小野田くんに今までの経緯を説明しながら、4人で学校までの道を辿る。
帰ったら、すぐDVD用意しよう。
今から帰宅後のことを考えて、私は朝から気持ちが逸るのだった。