第17章 灯籠
「良かったでええ~!!二人とも!!」
舞台から退場した瞬間、真っ先にアマモリくんが興奮状態で飛び付いてきた。その後ろから先輩がわぁっと私達を囲んでくる。
「もー!感動したよ!何あの拳!!」
「拳ゴンッ!とか聞いてないよー!!!」
先輩が泣きながら詰め寄ってくる。
いや、あれは咄嗟で…。
「先輩たちも、ハイタッチとか聞いてないっすよ」
実弥が相変わらずむず痒そうにしながら言った。
「あー、あれは伝統だから!」
「はぁ、そっすか」
「反応うす!?」
「照れてるんですよ!」
私は慌ててフォローを入れた。実弥がギロリと睨んでくる。ひええ、怖い。
「おうお前ら!!ド派手に決まってたじゃねえか!!」
宇随先輩もやって来た。実弥はまた首の後ろを手で擦った。
「宇随ー!!あんたも何よ!?ソロ終わったら二人に拳あげてー!!」
「ん?後輩へのエールだよ。」
「「宇随~!!」」
先輩達がまたわんわん泣き出す。
あー、ヤバい私も泣きそう。
「宇随先輩、これでいなくなってしまうんか」
「…寂しいね」
「ふん、死ぬわけじゃねえだろ。」
実弥がぶっきらぼうに言う。
私はうるうる来ていた涙をごしごしぬぐった。でも、一度出ると止まらなくて。
「うん。」
涙で顔をぬらしたままそう答えるのがやっと。
「泣かしたで~不死川が泣かしたで~」
「はっ!?勝手に泣き出したんだろうが!!つかなんだその歌!?」
「あかんで~あかんで~ハンカチの一枚でも出し~や~」
アマモリくんが変な歌を即興で作って歌いながら歩き去っていく。
実弥が青筋をたて、盛大に舌打ちしながらポケットからハンカチを出す。
「ん!!拭けよ!!」
「え、あの」
「未使用だよ!!」
「……ありがとう」
「アマモリ、てめえええええええ!!!」
実弥にヘッドロックをかけられるアマモリくん。
一年生の奇行そっちのけで感動のあまり泣いている先輩達。
あぁ、終わっちゃったんだなとつくづく実感した。
寂しいような、安心したような複雑な気持ちだった。