第17章 灯籠
楽屋での最後の音出しも終わり、いよいよ本番。
私は相棒の楽器と楽譜をもってステージ裏に移動する。
ステージに入る順番に並び、準備万端だ。
「見てみ、キリキリちゃん。お客さんようけいてはるわ。」
「い、言わないでよ。」
ステージ裏では壁となっている反響板の隙間から客席が見えるので、お客さんの存在が確認できる。
アマモリくんの言う通り、確かにたくさんお客さんがいた。
「ぜーんぶトランペットって思ったら?」
「へ?」
「ほら、あれとかめっちゃ磨かれてない?」
アマモリくんが指差した先にはスキンヘッドの男の人。…照明に照らされてピカピカに光輝いている。
「…っふ」
「あ、やっと笑ったでこの子」
アマモリくんがにしし、と笑った。
「ほな、いつものキリキリちゃんに戻ってや。」
「うん。ありがとう。」
気持ち悪さが消えた。アマモリくんの言う通り、いつもの私になれる。
さぁ、本番だ。
先輩達を精一杯追い出そう。この一年間は本当にお世話になったんだもん。安心して、卒部してって、背中押さなきゃ。