第17章 灯籠
京都出身京都育ちの男の子。中学から東京にやってきた、アマモリくん。カナエとクラスが同じだ。
本名はアマノサエモリ。それを縮めてアマモリくん。皆そう呼ぶ。というか自己紹介で自らそう名乗った。ニックネーム堂々と公認で言えるのすごいと思う。
関西人特有のノリで明るく朗らか。吹奏楽部の人気者。ちなみに、入学してからずっと帰宅部だった。吹奏楽部には途中入部でつい最近入ってきた子。彼も私と同じで、今日が初舞台になる。
「何をいちゃついとんのん?」
「いちゃついてねーよ。」
「いやん、ほんまや。キリキリちゃんどないしたん?顔真っ青やん。」
キリキリちゃん、というのはニックネームだ。ちなみに彼しかそう呼ばない。霧雨って名字からとったんだろう。
「あー、はん。わかったで。緊張しとんのやろ。わかるで。俺も朝から膝笑いっぱなしや。あれか、本番前の夜は寝れへんタイプか。」
「う、うん、昨日は眠れなかった。」
「本番前に限って眠なるんよなぁ…。前夜は緊張で眠れへんかったゆうのに、今眠たいんやから。」
アマモリくんの話しに合わせたら、何だか良い言い訳になった。実弥も睨んでくることはなくなった。
「二人みてさぁ、いや逢い引きやんって思て走ってきたんやけどな。近くで見るとカツアゲやわ。不死川、あんまいじめたらんときや~。」
「あぁ!?」
「おぉ、こわこわ。ささッ、僕らは行きましょ、キリキリちゃん。」
胡散臭いお笑い芸人みたいな喋り方をして私の背中を押していく。
吹奏楽部の良いところは、男女なんて関係なく楽器を吹き回したり、腹式呼吸のときに体を触りに行くのでボディタッチとか平気になっちゃうところだよね。
……今の状況に何にも関係ないけど。