第17章 灯籠
久しぶりの部活は楽しい。
冬休みの予定はほとんど吹奏楽部で埋まっていて、年末には本番もあるから大変だ。
一応、三年生はその舞台で引退する。
「ちゃん、初舞台だもんね!」
「うん。何だかんだでずっと出られていなかったから。」
吹奏楽部の活動を優先するとは決めたものの、人数の少ない美術部を放ってはおけなかった。そのため吹奏楽部は二の次だった。
「じゃ、個人練習頑張ろー!」
「うん!」
いつものごとく、散り散りになって練習する。私が練習する場所はずっと同じ。いつもの階段の踊場に向かった。
「「あ」」
私は階段下で実弥とエンカウントした。
「…そこか」
「うん」
「お前、いつも同じ場所なんだな」
そう言われて苦笑した。
「場所を固定した方が落ち着くんだ。不死川くんは毎回場所変えてるの?」
「……俺は場所変わんねえと落ち着かないからなァ。」
すると、実弥はさりげなく口にした。
「一緒にやるか?」
好きな男の子と二人っきりで練習!青春!キャピキャピッ!!
って、そんなに現実はドラマじゃない。
「お前タンギングおっせえんだよ!!」
「あんたこそスライドダメダメじゃん!オイルぬって!?」
「さっきピストン戻ってなかったぞ!!お前こそオイルぬれ!!」
「あとここリズム違うッ!!」
ギャンギャン叫んで、まるで喧嘩みたい。やるときは真剣にやらなきゃって思ってこそだ。
「ちーがーうー!タタタン、ターターって吹くの!」
「あ?もう一回吹いてくれ。」
実弥はどうもリズムを読むのが苦手らしい。
…トロンボーンの楽譜をトランペットで吹くの嫌なんだけどな。