第2章 始まり
横浜という、地で、ある夫妻の間に1人の娘が生まれた
その娘は、両親に愛されながら健やかに育っていくはずだった
その娘は亜麻色の髪だった
その娘は碧眼だった
日本人同士の間に生まれたものの、異国人のような見た目の少女は
物心つく前から、虐げられるようになってしまった
笑わないで
泣くな
喚くな
嬉しそうにするな
気持ち悪い
あんたの目が嫌い
お母さんなんて呼ばないで
お父さんなんて呼ぶな
これらの言葉は、娘にとっては当たり前にかけられる言葉だった
娘が10になった頃から父親は娘に手を出すようになった
殴る蹴るは当たり前のことだった
ある日、耐えきれなくなった娘は、家の前で立ち竦んだ
“あの人達が、絶対に来れない所へ行ってしまいたい”
14になった頃、少女はそう願った
叶うわけのないその願いを頭に浮かべたとき
不意に娘の足が自身の影の中へと沈んでいった
『⁉︎』
娘が驚いてしまっている間に、娘の全身は影の中へ入っていた。
ポートマフィア、首領に就任したばかりの森鴎外は
期せずして、閑静な住宅街でその少女を見つけた