第5章 生きる意味を~過去編~
ガキが立っていた。
『あぁ…もう死にかけてる…がな』
『ひどいケガ!お、おとうさん!』
ガキが爺に向かって走っていく姿を最後に、オレの意識はそこで途切れた。
いい香りがする。
『ん…ん?』
オレはゆっくりと目を開け、周りを見渡した。
誰だ…?こいつ…
『あっ!おきた。おとうさん!男のコが目を覚ました!』
奥でいすに座っていた爺がこちらに近づいてきた。
『おぉ、目ぇ覚ましたのか。傷の具合はどうだ?少年』
はっと気づき、切られていた腹を見ると包帯が巻かれていた。
『…少し痛む…』
『そうか。でも、間に合ってよかったなァ。お前さん、多量出血で死ぬところだったんだぞ?すごい回復力だなぁ』
ルイは、どこだ?
部屋を何度も見渡したが弟の姿は見当たらない。
バッと起き上がって、必死に爺の服を掴んで叫んだ。
『弟は、ルイは⁉』
『あの子は弟さんか。今は、隣の部屋で眠っているよ。安心しなァ』
よかった。
『っぅ!』
腹部に激痛が走った。
『急に起き上がるからだ。傷の痛みが引くまでは寝ていなさい』
『でも…』
『何も気にすることはない。家は?ご両親は?』
『…オレのことを殺そうとした。だから、地下街に逃げてきた』
『そうか…なら、行く当てが決まるまではここにいるといい。レスタ、面倒見てやれ』
『うん!分かった!やったぁお友達だぁ!』
その日から、オレと弟はこの家で暮らした。
『レスタ、一緒にパン買いに行こうぜ』
『いいよ。お父さんからお金もらってきて!』
『じじい、パン買いに行くから、金くれ』
『ほらよ。これで2つは買えるだろう』
このじじいに、格闘術から敵の動きの読み方、ナイフの振り方などをレスタとともに習い、地下街で生きる術を学んでいった。
だが、爺は死んだ。
レスタと爺の家もいつの間にかなくなっていた。
弟も死んだ。
オレが守ってやれなかったから。
オレの力が足りなかったから。
地下街のやつらにやられてしまったんだ。
オレとレスタは基地を作った。そして窃盗をすることで生計を立てていた。だが、12になった頃にしくじって追っ手に捕まりかけた。
『万引きだ!そいつを捕まえろ!』
『クソッ!もう気づかれたのか!』
そこで、リヴァイに出会ったんだ。