第5章 生きる意味を~過去編~
そうだ。
自分が生まれてきたから。
この世に生まれてきてしまったから。
自分を取り巻くすべてを不幸にしたから。
オレは地下街ではなく、地上で生まれた。
地上に住んでいた。
学校にも通っていた。
でも、地上にオレの居場所はなかった。
左目に傷がある、という理由だけで。
傷があることの何がいけないんだろう。
愛想を振りまく必要は全くない。
なぜ、興味もない大人に、しっぽを振っていかなきゃならねぇ?
そんなオレの性格も相まって地上でオレが生きていることをよしとする人はいなかった。
学校へ行くと、家の化け物だ、といじめられ、ひそひそ噂話をされ、家に帰れば、実の両親に殴られる。
―『やーい、化け物が学校に来たぞー!』
『ばーけもの!ばーけもの!』
『かーえーれ!かーえーれ!』
―『あそこの家の子、愛想もないし、全くしゃべらないし、気持ちの悪い子ねぇ…まるで化け物みたいね…』
『そうよ。それに顔に傷があるなんて、怖いわねぇ。何かされたら怖いから娘に近づいちゃだめよって言い聞かせてるのよ…』
―『こっちへ来ないで!気持ち悪いのよ!なんで何もしゃべらないの!何か言いなさいよ!あんたみたいな子、産むんじゃなかった!』
『その傷どこでつけてきたぁ?お前のせいでここらでなんて呼ばれてるか知ってるか?化け物の一家だとよ。ナイフなんか持ち歩きやがって、死ねよ!出ていけ!疫病神!』
何もしてない、オレは何もしてない。
犬に引っかかれたような傷があるだけで、こんなひどい仕打ちを受けなきゃいけねぇのか。
でも、弟は違った。
オレを必要としてくれたんだ。
『ねーちゃん、ねーちゃん。待ってよぉ』
いつもオレの後ろをついてまわっていた。
弟はできの悪い子供と言われていたオレと違い、友達もいて、大人たちに、両親に愛されていたのに。
だから、あの頃は弟のために生きていこうと誓ったんだ。
あいつが俺を必要としてくれる間だけでも。
でも、オレは守り切ることができなかったんだ。
オレは、いつものように帰りたくもない家に帰った。
すると、両親の怒鳴り声が聞こえた。
『あなたはあんな子とは違うでしょう!可愛げもなく、ただの金食い虫とは違うでしょ⁉』
『そうだ!だからもう、あいつについて回るのはやめなさい!』