第1章 リヴァイとの出会い
―「万引きだ!そいつを捕まえろ!」
「クソッ!もう気づかれたのか!」
は全速力で逃げながら悪態をついた。
ふと左に狭い路地が見える。
「ここならっ!」
その狭い路地に身を滑り込ませるように入るとボロい家が目についた。
隠れられる場所ならもうどこだってよかった。
捕まり、輪姦され、売られるのは怖かったから。
中にいる奴は殺して全員黙らせればいいと考えながら俺はドアをぶち破る勢いで入りドアを閉める。
足音がどんどん近づいてくる。
俺は気づかれないよう必死に息を殺した。
「あいつどこへ行きやがった!探せ!左目に傷があった!」
でかい男どもが俺が今入った路地を抜けていく。
声が遠ざかっていき、バクバクと周りに聞こえるんじゃないかってほどうるさかった心臓の音が、だんだん静かに、規則的になっていった。
息切れが収まると、部屋の方へ向き直る。
部屋にはベッドに横たわっている老人と簡素な家具しか見当たらない。
ここは地下街だからそんなことは当たり前だが。
老人の横たわっているベッドへ足を進める。
「おい、おっさん」
死んでいるのかと、試しに声をかけてみるが返事はない。
手首の脈に手を当ててみようとしたときだった。
「死んでる」
「うわっ!」
周りをよく見渡すと、部屋の隅にガキがいた。
俺はそのガキをみて、衝撃を受けた。
ここまでがりがりな子供は見たことがない。
目にも生気がない。
いつの間にか俺は、先ほど盗んだパンをガキに渡そうとしていた。
俺の記憶の中では、他人に物をやったことがない。
そんな俺がやってしまうほどそいつは酷い有様だった。
ガキはパンを受け取らず、ぼーっとしていた。
俺はパンを一つ取り出すと、そいつの口の前へと差し出した。
しばらくそうしていたが、ガキは相変わらずボーっとしたままだった。
―毒が入っているとおもってんのか?―
「毒なんて入ってねぇよ。第一入れたところで俺に得があるか?」
ガキはしばらくパンを見つめた後、パンを口に含んだ。
うまそうに食っていたからか、ガリガリに痩せていたからか、分からないが、盗んできたパンをぜんぶやってしまった。
俺はガキの隣に座ってそれをじっと見ていた。
ガキはパンを全部食い終わると俺にもたれかかって眠ってしまった。
「かわいいな…」