第2章 成長
「、本気なの?」
「もちろん本気よ」
はあ、と頭を抱える母と苦虫を噛み潰したような顔をする父。
私たちを挟むテーブルの上には、ただ一枚、国軍の志願書があった。
今年で学校を卒業して、それぞれの道を生きていく。
仲のいいあの子は親の決めた人のお嫁さん、頭のいいあの子は進学、大人しいあの子は家の本屋さん。
何も言わない私に、両親はまさかこんなことを言い出すとは夢にも思わなかっただろう。
「…どうして、軍なんだ?」
今まで黙っていた父が口を開いた。
ここで納得してもらわなくては、以降何度言っても許可してくれないだろう。
「人の役に立ちたいの」
「人の役に立つだけなら軍じゃなくたっていいだろう」
「軍に入って、国家錬金術師になりたい。錬金術を使って、国の人みんなが幸せになれるような、そんな未来を作りたい」
家の二階の一番奥の部屋。
そこには私より背の高い本棚が並び、多様な本が敷きつめられている。
その中に数冊、錬金術の本があることに気がついたのはいつだったか。他の本と比べて何度も開いた跡がはっきり残るそれは、今は家にいない兄のものだ。
錬金術の存在は知っていた。だけど、その本を見た時初めて身近なものだとわかった。
「錬金術師に、なりたいのか?」
「うん。なりたい」
父は私の錬金術師になりたいという告白に目を見開き、ひとつため息をついた。
「…少し、考えさせてくれ」
「アナタっ!」
「の将来のことは、いつかは、考えなきゃならないことだろう」