第5章 甘味屋での甘い休息
「どんなに想いを捧げても、本心を少しも明かしてもらえないまま、はぐらかされるんですって。それでも、あんないい男、一度好いたら嫌いになれないに決まってるでしょう?」
「だから、『地獄』ですか……」
「すげなくされるとわかって身を焦がす子も多いのよ。あなたも気をつけた方がいいわよ」
別れ際、話を聞かせてくれた中のひとりが、切なげな笑みを浮かべていたのが印象に残った。
(『惚れれば地獄』……。とんでもないな、あの人)
そう言われる理由は、わからなくもない。
近づいたら危ないと勘が言っているのに、やけに気になる–––そういう妖しい引力が光秀さんにはある。
(まあ……、私は絶対、好きになったりしないけど)
私は、どこか自分に言い聞かせるように思った。