第5章 甘味屋での甘い休息
(あ、)
光秀さんの唇の端に梨の果汁が一滴ついてることに気づいた。
「光秀さん、ここに」
とっさに「ついてますよ」と、自分の唇を指先で押さえて知らせるとーーー
「ああ」
光秀さんは桃色の舌先を僅かに覗かせ、雫をさりげなく舐めとった
(!!)
ドキリと心臓が小さく鳴って、なんだかいけないものを見てしまった気になり、慌てて視線を机に落とす
「そ、それで、梨は美味しかったですか?」
「歯応えがあって飲み込むに時間は掛かるが、多少は腹持ちしそうだ」
「味の感想を聞いたんですけど。」
その解答に半ば呆れた私は、これ以上、梨を勧めるのは諦めて、自分で食べることにする。
(ん……?)
光秀さんは茶碗を机に置くと、さりげなく頬杖をついた。
それがまた様になっていて、一瞬で店内の女性の視線を独占している。