第5章 甘味屋での甘い休息
(あれ、怒ってないの……?)
笑い声に頭を上げてキョトンとしている間に、お茶と、果物がたっぷり載った皿が運ばれてくる。
「叱られた子犬のような顔をするのはそれくらいにして、水菓子でも食べろ、茜」
「てっきり、これからお説教が始まるのかと思ってました……」
光秀さんが怒ってないことに、ほっとすると緊張が解けた。
「秀吉じゃあるまいし、小娘に説教を垂れる趣味はない。ここ数日、俺のしごきに耐えてきたことへの褒美だと思えばいい」
「そのために私をお茶に……?」
「あとは、まあ……先刻の礼だ」
「礼? 何のことですか?」
「わからないならいい」
茶碗を傾ける光秀さんの横顔は、どことなく愉快そうだ。