第5章 甘味屋での甘い休息
「信長様をいつ裏切ってもおかしくない。あれは義のない男に違いない」
(光秀さんに、義がない……?)
あざけるように発された言葉が、ふと引っかかった。
(油断ならない人だとは、私も思うけど……本当にそうかな。そういう感じとは、違うと思うんだけど。)
「知っているか、娘。光秀殿は元々、身分の低い牢人だったのだ。どうせ信長様に媚びへつらい汚い手を使って、今の地位にのし上がったに違いない」
「……そんなことは、ない思いますけど」
「なんだと……?」
武士たちの顔が強張るのがわかったけれど、つい出た言葉は引っ込められず、もう言わずにいられなかった。