第1章 淡雪に燃ゆる想いを
童磨の館から出るご飯は本当に美味しい。最初は鬼の家だし人間の肉が入っているかもと思ったが、食べたところでわからない。家主である童磨は時たま怖いことを言うけれど基本的には女の子に優しくて大らかだ。
「滅茶苦茶に居心地が良い」
泊まっていけばいい、どれだけ長居してもいい、もう住んで仕舞えばいい、と童磨に流されるように言われ、遠慮なく寝室まで用意してもらったあたしは敷布団と掛け布団に挟まれてそう言った。
童磨は無惨様が良しとするまではあたしのことを食べないと言ってたし。"良しとするまで"、に納得してるわけでは無いが、食べられないのなら、みんながあたしに優しくて温かいここは安全で安心な、もはや優良旅館だ。レビューは文句無しの星5です。
「さ、寝よーっと」
まぁ星は満点でも、きっと猗窩座には怒られるでしょう。そう思いつつも、布団の中に入ったあたしは静かに目を閉じる。次の日になったらきっと彼が迎えにくる、怖い顔で。でもそれはあたしにとってそこまで悪くない、逆に居心地の良いものだったりする。呆れた表情で、だけどあたしの帰りを待つ猗窩座を思い浮かべ、フッと一人で笑ったあたしは深い眠りにつく。
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