第18章 お題(全キャラ+α)
灰崎祥吾
『ただそばに居たかった』のヒロインです。
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「は?ありえねー。前の女の方が楽だったわ」
「っ…!」
思わず口をついて出た言葉に灰崎は後悔したが、もう時すでに遅し。
「…勝手にしなよ…っ!」
プツリと切れ、ツーツーと耳元に入ってくる無機質な音に灰崎は携帯を投げつけていた。
あの、海常との試合後頼華と再会し、付き合うことになった灰崎。それから彼は変わった。頼華がいつ福田総合に来てもいいように、辞めようと思っていたバスケも、毎日とまではいかないが、部活に顔を出すようになっていた。それに、灰崎にはひとつ、絶対にやっておかなければいけないことがあった。
それは、女関係だ。中学までの女関係なら頼華も知ってはいるが、灰崎が静岡の福田総合に入学したことで、縁は切れている。
しかし、高校に入ってから頼華とあの日再会するまで、ほぼ女遊びをしていたに等しい。その縁を断ち切るべく、片っ端から連絡し、女に平手を受けながらも耐えていたのだ。
そのせいもあってか、最近頼華との連絡が疎かになっていた。
そのすれ違いで口論になってしまったのだが。
不器用な灰崎は自分の思いをなかなかストレートに出せずにいた。今回だってそうだ。思ってもいない、前の女、なんて台詞を口に出してしまった。
「…かっこ悪、俺」
もう離さねぇからと自分から言ったくせに、頼華を突き放した。後悔の念だけが灰崎を支配する。
「…ラチがあかねぇ」
灰崎は携帯と財布を手にすると家を飛び出した。
その姿を見た母親が小さく微笑んでいたのも知らずに。
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「…やっちゃったなぁ、」
あたし、とベッドに倒れ込む彼女。
鼻をすするとぐずぐずになっている。
「あーあ、酷い顔…」
鏡で見た自分の顔は目は赤く酷い様だ。
「…もう、終わりなのかなぁ」
灰崎を思うと再び涙が零れ落ちてきた。
そのまま目を閉じ、泣き腫らした目を癒すように眠りについた。
「ん……」
どれくらい寝てしまっていたのだろう。
気づけば陽が傾いていた。
ふと、自分がタオルケットを羽織っているのに気づく。
え、と上半身を起こせばそこには見慣れた愛しいはずの顔があった。
「…祥吾くん、」
「…ん、頼華…?」