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Amor vincit omnia__愛の勝利

第17章 王様の恋人(跡部景吾)




関東大会初戦、青学と戦った氷帝だったが敗退した。

しかし、部内の強化の為、今日もまた
月1回の跡部家の別荘での合宿が行われていた。



「あ〜〜〜…………………」
「なんや、跡部」
「…頼華不足だ」

いつもの様にコート際に設置された専用の椅子、パラソルの下で1人項垂れている跡部。
部内ではこんな跡部の姿は日常茶飯事であり、またか、と1人溜息を吐く忍足がいた。
普段は、俺様の美技に酔いな、とか、メス猫共、とか言ってるくせに、彼女の事になると話は変わってくる。


「坊っちゃま、お電話です」
「…誰からだ」
「頼華様から───」

とミカエルが言い終わる前に即刻携帯を耳に当てる跡部。言葉にして言うならば、今の彼の表情はまるで、遠足前の楽しげな子供のようだ。


「頼華!!」
『声でかい』
「何で連絡寄越さねぇ…はっ、まさか俺以外の男と会ってたんじゃ…!?」
『なわけあるか。用事を一気に終わらせてたのよ』
「用事?俺との連絡よりも大事なのか…!?」


傍から見れば笑える会話だ。跡部の声はだだ漏れでクスクスと向こうで向日や宍戸が笑っていた。
ふと、一台の見慣れた黒塗りの高級車が敷地内に入ってくるのが見えた。

携帯を耳に当てながらも何気なくそちらに目をやると、止まった車から降りてきたのは頼華で。


「ここに来る為に用事済ませてきたのよ」


悪い?と彼女は笑った。

「…頼華!!!」
「…はいはい」


大型犬のように飛びついてきた跡部をよしよしとする頼華。


「ミカエルさんに、内緒で頼んでおいたのよ」
「最高の女だぜ、頼華!」
「あー、分かったから」

「先輩、お久しぶりです」
「やっと、跡部がまともになるぜ全く」
「久しぶり忍足くん、皆も」


跡部は抱きついたまま未だに離れようとはせず、そのままの状態で会話をする頼華。


「ほら、早く練習」
「んー、頼華………」
「全く…」


皆先にはじめて、という頼華の声で各自練習が始まった。


「…1回しか言わないからよく聞いて、」
「…頼華…?」
「景吾に会いたくて、早く用事済ませてきたのよ」


だから、ほら、と跡部を己から剥がして軽くキスをした彼女。
久しぶりだからかフリーズした跡部がいた。

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